日本でアドベンチャーバイクの走れるフィールドが極端に少ない理由

知恵袋

アドベンチャーバイクを拒絶する日本の風土

アドベンチャーバイクを思う存分楽しみたいと思ったら、あなたならどこへ行きますか?

先日、中古のアドベンチャーバイクを購入したので、さっそく近場の道幅の広い林道を探してみました。

ところがシングルレーンの林道ならわりとあるのですが、200 kg近い車体の、ミシュランアナキー3を履いているとはいえキャストホイールの愛車で出かけられるような場所ではありません。

日本の狭い林道といえば右は法面、左は険しいガケ。
乾いたガレ登坂はバイクを信じきれずに失速すると、よくてスタック、前後タイヤはロックしたままズルズル滑り落ちる中、なんとかこけずに済まそうと必死でバランスを取る地獄。

私の力量ではとてもじゃないけれど、入っていく勇気はありませんでした。
たとえ走破できたとしても、正直無傷で帰ってこれる自信がありません。

道幅の広い林道を走ろうと思うとどうしても遠方まで出向かなければなりあません。
アドベンチャーバイクを買った皆さんははたして気軽に林道走行を楽しめているのか。
いろいろ調べているうちに、ふと現地の方々、アドベンチャーバイク、アドベンチャーツアラーと呼ばれるバイクが生まれた国の方々がどんなところを走っているのか気になりいろいろ調べてみました。

そこでドイツと日本の本質的な違い、
公表されているデータから紐解いてみましょう。

参考:日本のわりと日本らしくないワイルドな林道(撮影日 2021年10月10日)

可住地面積の違いが圧倒的!

日本とドイツはともに森林大国です。ですがそのあり方が少々異なります。
日本は山岳地帯が国土の大半を占めています。ところがドイツをはじめ欧州各国の多くは丘陵地帯です。

つまりなだらか。
どのくらいなだらかなのかを示す指標として可住地面積があります。
なだらかなら家を建てて住めますから。
で、調べてみるととんでもない差に驚かされます。

国土に占める可住地面積の割合

英  国 84.6 %
フランス 72.5 %
ドイツ  66.7 %
日  本 27.3 %
出典:国土の脆弱性(PDF形式:1.10MB) – 国土交通省(pdf)

ヨーロッパから3か国だけ取って見ても日本の2倍以上!
国土のほとんどを山岳地帯が占める日本と丘陵地帯が構成する欧州各国の差は歴然!

そりゃぁ道幅も狭くなるはずです・・・
日本の林道って山あいばかりです。
法面とガケに挟まれた細いところを通すわけですから。
日本の一般的なシングルレーンの、250トレール車が隙間にバイクを詰めるようにして通過していく「スキ間」にはBMWのR1200GSなんてまず通れません。

実際にドイツ式の幅広林道を訪れた方のサイトを拝見すると、そもそもあり方が違います。
ここは市民がイチゴを摘みながら散歩や自転車を楽しめる林道。
日本の林道は登山者や林業関係者のためのものといった風です。

出典:八戸市森林組合のブログ-ドイツの林道

Referenz: wunderbar Waldweg in Deutschland

それにしてもドイツの林道、すごい道幅ですね。
欧州の場合はなだらかな丘陵地に林道を通すわけですから道幅なんていくらでも広く取れてしまいます。
重量級のアドベンチャーバイクだって気軽に走らせることができそうです。
同じ森林国でもあり方があまりに違います。

林道の路網密度はもっと違った!

さらに調べを進めます。まずは舗装率をしらべてみます。

各国の舗装率

英国・フランス・ドイツの舗装率 100 %
日本の舗装率 80.11 %

出典:Ⅱ-3-1 世界の道路延長、舗装率 – 国土交通省(pdf)

意外なことに欧州の舗装率は軒並み100 %。対して日本の舗装率は80.11 %に留まります。
なんだか妙な感じがします。日本の方が舗装率は高く、どちらかというと欧州の方が未舗装の林道が多いイメージです。
そもそも舗装率100 %なんてあり得なくないですか?
そこで別の資料をさがしてみると、ありました!

林道の路網密度の比較(森林1 haあたり)

ドイツ : 118 m/ha
オーストリア:89 m/ha
日 本 : 13 m/ha
出典:路網密度と作業システム-林野庁(pdf)

森林の中を通る林道の密度。
可住地面積どころではありません、ドイツの林道は日本の9倍以上です。

もちろん国土の広さや森林の量、距離の算出方法も違うわけですから厳密な言い方ではありません。
ですがライダーにとって、ある限られた広さの中にどれだけの林道があるのかといえば、やはり9倍あるわけです。

想像してみてください。なだらかな丘陵地帯に幅広の未舗装路が走っている。
その林道の数が日本の9倍!
わざわざガケと法面に挟まれた狭い林道ではなく、右と左が森林の広々とした林道。

そこは気合いの入ったオフ車乗りがハイテンションでライディングを楽しむフィールドではなく、日の光が差し込む森林の中、未舗装路ツーリングを存分に楽しむフィールドです。

アドベンチャーバイクはきっとここで生まれたんでしょうね。

さて、ここでドイツのライダーがこんなに広々とした林道を走って、どれだけ歓喜しているのかも調べてみました。調べて羨ましがる予定でしたが・・・残念ながらあちらの状況も非常に厳しくなってきているようです。

ドイツの掲示板を覗いてみます。

「どこか合法の林道(legal befahrbaren Waldweg)しらない?」
知ってるけど教えない。(ライダーが増えると)通報されて走れなくなるだろ」
「そんなこと言うなよ~。彼女になるからさ。連れてってよ」
「通行禁止の看板なかったんで林道通っちゃったんだけど、大丈夫かな?」
「ドイツのシンプルなルールにあるだろ?禁止されていないものはまだ許可されているだよ。きにすんな」
「いやいや森林法で基本ダメでしょ」

なんて書き込みがいたる所にあります。

どうも近年は森林の環境保全を目的に林道の車両通行を原則禁止とされてしまっているようです。MTBですら不許可の場所も多いとか。
それでも、車両通行できる合法林道がまったくないわけではなく、細々と隠れた合法林道を探しては突撃、中にはこっそり非合法に楽しんでいる方もいるようでした。

なんだか、世知辛い世の中になってきたのは日本だけじゃないようですね。

「ドイツ羨ましいです!」

で締める予定が狂ってしまいました。