ヨーロッパを走るバイクたち(1) スクーター編

ヨーロッパのビンテージスクーター 知恵袋

ヨーロッパを走るバイクたち(1) スクーター編

長文ばかりも退屈なので、ここで撮影してきたドイツ・オーストリアを走るバイクを紹介します。
といっても本当に走っているバイクを撮影することはかなり難易度が高かったので、止まっているバイクですけど。

このページでは欧州で愛されている10台のスクーター達を紹介します。
スクーターも日本では見られない、欧州ならではの進化を遂げています。
アドベンチャーバイクの進化を紐解く上でも、スクーターの今を知ることが何かのヒントになるかもしれませんしね。

オシャレな小型スクーター VIVACITY 4T

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メーカー:Peugeot(プジョー・フランス)
モデル:VIVACITY 4T
エンジン:空冷単気筒49.50cc
シャフトドライブ
重量:98kg
URL : http://www.peugeotscooters.com/

普通の小型スクーターも石畳の上に止めていると妙にオシャレな気がしますね。
まさにヨーロッパマジック!不思議です。

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となりに止まっている黒いスクーターはメーカー・車種がよく判りませんでした。アルファベットではなく、カタカナで「レーシング」と文字を入れているのはとても新鮮です。
愛車に「シャレオツ」とかカタカナで入れてみたい衝動にかられます。

撮影場所は熊本市と姉妹都市協定を結んでいるドイツのハイデルベルク外周部です。
旧市街地への入り口あたり、石畳がはじまるところにスクーターは駐車しています。
ここから先は旧市街の古い町並みやマーケット、観光スポットが立ち並ぶエリアですので、ここから先に侵入するバイクはほとんどありません。
お店の方やルプレヒト・カール大学の学生がスクーターを街中に止めている程度でした。

石畳もへっちゃら!大径ホイール採用 Carnaby125es

Carnaby125es

メーカー:Piaggio(ピアッジオ・イタリア)
モデル:Carnaby125es
URL:http://www.piaggio.com/

前後とも大きなホイールのスクーター。名前はロンドンのカーナビー通りが由来でしょうか。
ドイツでは中古で25万円くらいで取引されていました。
このスクーターを見ていると、ホンダのスクーター「Via」を思い出します。
イタリアで生産されていた「ホンダ・Via」の前輪21インチ、後輪23インチのホイールはヨーロッパの石畳の走破性向上を狙ったものでした。
現地の方の足として街中を走る、とても居住性の高そうなスクーターです。
残念ながら現在はラインナップされていないようです。

そんなとこに駐車するなよ!空気読めてない S-Five 50

S-Five 50

メーカー:Daelim(大林(デーリムモーター)・韓国)
モデル:S-Five 50
URL:http://www.dmc.co.kr/

広場のど真ん中に1台だけ駐車する韓国のスクーターオーストリアのザンクト・ヴォルフガングという町の中心にある教会前の広場。観光客が記念撮影をする場所に小型スクーターがど真ん中に駐車している珍事。
メリケンのおばちゃん達がカメラ片手に訝しそうにスクーターを見ていたのが印象的でした。
どこの国にも空気読めないライダーはいますね。

さてこのスクーター、調べてみると韓国のデリムというメーカーのもののようです。
韓国メーカーといえばヒョースンしか知らなかったので新鮮です。

ヴィンテージ・スクーターなのに新鮮! Puch 125SR

Puch 125SR

メーカー:Puch(プフ・オーストリア)
モデル:125SR
年式:1959年
エンジン:2ストローク単気筒121cc(3速ミッション)
最大出力:5hp (5100rpm)
最高速度:75km/h
重量:122kg
驚きの二人乗りに特化した小型タンデム・スクーター。スクーターでもパッセンジャーの居住性を妥協しない工夫が素敵です!
大型キャリアがついてもアンバランスにならないデザインも秀逸です。
ひょっとしたらパッセンジャーの下の空間もトランクルームになっているのかと思いましたが、どうもエンジンと大径ホイールがしっかり入っている様子。

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もし今の技術でこのデザインを採用したらすごくお洒落なアイテムになりそうなんですがどうでしょうか?
前後が離れているから、前の人の背中を化粧で汚す不安も少ない上、シート下にトランクルームまで作れば積載性も最強クラスです。
なんとなくリア周りがスズキのSW-1に似ていますね。ヤマハのVOXにもコンセプト的に面影があるような気がします。
タンデム前提の125cc、パッセンジャーの快適性と積載性、そしてヴィンテージと呼ばれるまで使い続けられる堅牢性を兼ね備えた、このプフ125SRの様なスクーターをどこか作ってくれないものでしょうか。
きっと歴史に残る、カブに匹敵する国民的モデルになると思うのですが。

屋根付きスクーターを本気で造ったらこうなった! BMW C1

BMW Scooter C1

BMWというメーカーは少し風変わりなところがあります。世界の自動車・バイク製造メーカーの中でも突出して。

「自分が乗りたい(作りたい)XXXを、本気で造ったらこんなのになっちゃった・・・それでもいる? ちょっと高くなっちゃうけど」

自動車でもバイクでもいつもこんな調子です。
ホンダあたりは時々「自分の通勤に使いたいし、こんなバイクを作ろうかな。リンク式リアサスも不要だね。高くなるし不要でしょ」なんてお茶を濁すことがあります。

ですが、BMWだけはガチ変態です。スズキもたいがい変態ですが実は変態度でいうとBMWが頭一つ突き抜けてます。真正の変態です。BMW抜きに変態は語れません。

このスクーター2000年に初出の現在は生産が終了したモデルなのですが、変態BMWの真価を十分に体現した造りをしています。
フロントガラスはアクリル樹脂ではなく重い強化合わせガラスを採用しています。屋根を支えるフレームもすこぶる頑丈です。
その上フロントは衝撃吸収構造を採用、しっかりクラッシャブルゾーンを供えています。3(2)点式のシートベルト完備。おまけにフロントにはテレレバーまで。
安全性も考慮してやりたいことをやり尽した結果、125cc、175ccモデルともに日本では120万円(並行輸入車価格)と大変高額なスクーターとなりました。

余裕で軽自動車が買えてしまいますね。
いや、1300ccのデミオも買えてしまう金額でした。
造りたいものを造りたいようにやった挙句、当然商売としては成り立たず、生産終了に至るわけですが。
変態を発揮する時に中途半端はしない。それがBMWというメーカーです。
こんな変態BMWですが、悪しからず思うのはそれほど不思議なことではありません。
安全性に対する姿勢に妥協のないことを実践し、生産が終わった後もC1はこうして語り続けられ、市場の信頼を得ています。

きっとこれがBMW流のやり方なのでしょう。

ちなみに2013年現在、スペシャルモデルは約170万円で取引されています。

日本ではBMWのF800GS Adventureを買ってお釣りがきますね。
(ドイツならR1200GS Adventure買っておつりが(略 )

一番よく見る定番スクーター! Vespa GTS125(i.e)

Vespa GTS125
Vespa GTS125
Vespa GTS125i.e

メーカー:ベスパ(ピアッジオ・イタリア)
モデル:Vespa GTS125(i.e)
URL:http://www.vespa.com/

やはりというか、ベスパ(ピアッジオ)のモダンなスクーターが一番多く走っていました。
写真は3枚ともほぼ同じスクーターです。
街中の足として、石畳の走行を考慮してか堅牢な作りをしていることが伺えます。
フレームも随分太そうですね。
しかしベスパにアクラポビッチ (AKRAPOVIC) マフラーとは、国が違えば同じバイクでもカスタムの雰囲気が違ってきますね。

日本の影響が色濃く表れるマキシ・スクーター! Piaggio X8-125(200)

Piaggio X8 Scooter

メーカー:Piaggio(ピアッジオ・イタリア)
モデル:X8-125(200)
URL:http://www.piaggio.com/

125ccと200ccの2つの排気量をもつ「ピアッジオ・X8」です。
日本の250ccスクーターの様にも見えますが、車体の割に排気量は小さ目です。
リアシートの後ろにハッチがあり、ヘルメットが入る大容量56Lトランクルームがあります。
このような排気量125ccを超えるビッグスクーターはマキシ・スクーターと呼ばれていますが、近年どんどん大排気量タイプがラインナップされはじめています。海外ではビクスクブームの盛り上がりはまだまだこれからといった感じです。

独自に進化を遂げたヨーロッパのスクーター

いかがでしたか? 10台のヨーロッパを走るスクーター達を紹介してきました。
スポーツバイクと違い、街中がフィールドのスクーターは、日本のスクーターと比べてやや進化の流れが違う印象を受けます。

ヨーロピアン・スクーターの大径ホイールは石畳の走行を考慮したものです。
日本のものより大きいものが多かったですね。
また日本のスクーターは、モペッドからの移行の際に、すでに完成された現代のスクーターの形状で現れましたが、欧州では現在のスクーターに至るまで、かなり長い時間をかけて試行錯誤を繰り返していたことが伺えます。近年のビッグスクーター(マキシスクーター)のデザインは日本からの影響もずいぶん感じられますが。

それでもビンテージ・スクーターを眺めていると、古い歴史の遍歴を感じることができます。
ちょっと羨まく感じました。
日本のスクーターには、欧州のような直しながら乗り続けるという風潮はあまりありません。
誰もがスクーターは壊れたら買い換えるのがあたりまえだと思っています。
直してでも乗り続けたいと思えるスクーターを日本のメーカーが作ってこなかった事にその理由があるように思います。

もちろんそれは悪いことではありませんよね。より優れたもの、革新的なものに、速いサイクルで刷新していく。その国民性は日本人の個性であり、武器でもあります。
ただ、古いものが時の流れとともに消失してしまう姿にちょっともの悲しさを感じてしまうだけです。そんな日本で「ホンダ・Cub」を見るとなんとなく安心してしまいます。
日本も日本を代表するような国民的スクーターを1台くらい作ってもいいんじゃないかと思うのでした。